7↓8↑


7th Album

1. Tomorrow never knows
2. Ferris wheel
3. Go on
4. 天国ロックショー
5. Composition
6. 土足で上がったその靴をまず脱げ!
7. 海月達の踊り
8. 色の無い夢

2014.5.28 iLHWA RECORDS ILH-003 ¥2,000(税別)
“7↓8↑

――杉本恭一通算7枚目のソロアルバム『7↓8↑』が完成いたしました。気がつけばなんと2年半ぶり!時が経つのが早い(笑)。

「早いねえ。っていうか本当は去年のテールピースツアーに間に合わせたかったんよ。半年遅れた(苦笑)」

――あら。遅れたのには何か理由があったんですか?

「丁度曲作りの期間中にアコースティックのツアーがあったんよ。それが始まる前と終わった後に曲作りの期間を設けてたんだけど、アコースティックのライヴの前と後だと頭の中完全にそのモードになっててアコースティックな世界観の曲しか産まれて来なくてね(笑)。で、『これは無理だ!』ってなって……」

――伸びた。でも本作にはそのアコースティック・テイストもしっかり生かされてますね。

「そうやね」

――そして全体的には、様々な意味で非常に幅広い曲調と表情を持つアルバムとなっています。ということで、今回はその収録曲の全解説をお願いしようと思うのですが、まずは冒頭1曲目“Tomorrow never knows”、この時点で非常にヤラレタ感がありました。というのもこの曲、アコースティックでありながら同時にハードコアなんですよ!50~60年代のフォーク的感覚を活かしながらハードコア!こんなんぶっちゃけ聴いたことありませんよ(笑)。

「うむ。この曲の発想はね、エンジニアの松本大英とミーティングした時に、2枚前のアルバム『Electric Graffiti』で“成長”“32日”っつうのを矢野くんと2人で一緒にブースに入って1発録りみたいなのをしたんだけど、あれはレコーディングの音としても面白いし、そういうのをまたやってもいいんじゃないか?って言うから、どうしようかな?って考えたんだけど今回はスネアとベースとギターだけで狭いブースに入って一緒にやれる楽曲を作ってみようか?ってなって、これが出来た」

――なるほど。そしてこの曲、最初から1曲目に想定して作った曲じゃない気がするんですが。

「そうだね、通常の考え方だったらどっかアルバムの途中に入れちゃいそうなんだけど、ただ、出来上がったら思いのほか面白かったから、これ1曲目で行こうってなって(笑)。音像もこれ1曲だけ違うから、それも面白いし、頭でいいんじゃないかなと」

――そう、音質から何から他の楽曲と異なる。今作ってアルバムを聴き進めていく毎に「あれっ?」とか「ええっ!」とか思わず言ってしまうんですが、1曲目からそれを激しく助長してるんですよねえ。

「そうそう(笑)。ちなみにこの曲が完成したのは大晦日でさ、つまり追いつめられてたんよ。年明けすぐにレコーディングせにゃならん、それまでにコレ作っとかんと間に合わん!って。で、大晦日にすることとかは特になかったんだけど、ただどうしても紅白のあまちゃんだけは見たくて『それに間に合わせる!』つって(笑)」

――その甲斐あって妙にハイなテンションがある曲でもある。そしてそんな中、何故か激しく身につまされる歌詞があり。

「そうやろ?全ての大人が……いや、大人じゃなくても学生でもそうかもしれんが、とにかく分かるよね。こうじゃない人は多分殆どいないよね。ただ、本当はこんな労働者ソングみたいになる予定じゃなかったんよ、考えてるうちにこうなっちゃって(笑)。まあ俺はさ、毎日職場に通うとかの仕事じゃないけど、その感覚は残ってるし、やっぱ日々、明日は明日の風が吹く……ってことでビートルズからタイトルをいただき。もちろんミスチルじゃないよ?」

――はははは。私はてっきりザ・モッズからかと。

「モッズも使ってるんだ?だってこれ確かジョン・レノンかリンゴ・スターの造語だよ。ビートルズの“Tomorrow never knows”、曲かっちょいいから言葉も含めてみんな好きなんだろうね」

――まあこの曲にそのテイストは全然ありませんが(笑)、とにかくこの驚きの1曲目から始まって、先ほども言いましたように本作は驚きの連発連打。意外性に富んでかつ、非常にカラフルな作品となっています。

「まあ、基本に戻った(笑)。元々の俺に戻ったな」

――で2曲目。“Feris wheel”はサウンド的にはワイルドかつ無骨で男らしいR&Rナンバーなのですが、メインテーマとなっているのは廃墟の観覧車。非常にワビサビというか切なさがあるわけですが、これはまたどうして?

「これはね、たまたまね、テレビでイーゴス108のニュースを見たんよ。びわ湖タワーの観覧車。その取り壊しのニュースをやってて、そんでさ、イーゴスっていうのはスゴーイってことで、下らなくて俺が好きそうでしょ?で、108ってのはその時の世界最大の大きさだったんよ。けど遊園地が潰れて、最後観覧車だけ残ってたんだけど、それも遂に取り壊すと。で、最後にその観覧車をもう一度動かすんだと頑張ってたじいさんがおるんだけど、そのじいさん、バラバラになったイーゴス108の下で一人で酒飲んでるんよ。なんかもう寂しくて寂しくて、切なくなっちゃって、で、この歌詞ができたっていう」

――そのまんまやないかい!

「まんまだよ、ほんとそのまんま(笑)。まあ何か、俺のよく作る童話的な世界の歌にも近いんだけどね。あと曲のイメージはどっかヨーロッパ調と言えなくもないけど、でも実はびわ湖(笑)」

――はははは。楽曲と歌詞は相互反応で一緒にできたんでしょうか?

「曲が先にあったんだけど、俺の場合は結果的に曲に歌詞が導かれて出来てくる部分があるからさ。この曲にあるどっか寂しい感じとか、あとループの部分とかはずっと回転してる感じがある、観覧車みたいに。あと、このじいさんが何だか切ないけどカッコよく感じてさ。」

――ああ、確かにそこも合致してますね(笑)。あと、ちょっと話が逸れますが、そもそも杉本さん廃墟とか好きですよね?昔東高円寺にあった蚕糸試験場(現・蚕糸の森公園)とか、相当不気味だったのによく忍び込んでいたような記憶が。

「廃墟大好き!(笑)。元々好きな世界だから、なおさらイメージを刺激された部分が大きかったんだろうな」

――ですね。さあそして3曲目“Go on”。2曲目がどこか70年代初期のハードロック等を彷彿させたのに対し、ここではもう少し年代が進んでパンク前夜の70年代中盤パブロック、ドクター・フィールグッドの時代辺りを彷彿させる感覚がありました。そして何気に歌詞も興味深いというか、思わず笑ってしまいました。

「50歳になってもこんなこと思ってるっていうかさ、逆に大人になって凄く思うのは、自分に自分でブレーキかけることって増えてるやん。それが徹底的につまらないと思うことがやっぱあるんよ。うん。だから言いたかったことはそれだけなんだ。ブレーキかけすぎだったとかさ、進まないから止まるのやめたとか」

――そしてこの歌詞は1曲目の内容にも若干掛かってきますよね。

「そうだね。だから詞の世界で行ったらいろいろコンセプティブなところは出てくるんだけど、ただそれはあんまり出したくなかったから今回タイトルは『7↓8↑』にしたんだけどね、まあそれは後々」

――ええ、それは最後に聞きますね。で、話を戻すと、この曲の中にあるのは、大人としてのリアルな感覚とそこから逃してくれる開放感なんですよ。ユーモアに包まれた、真摯な生きるヒントがある。まあ要は、止まらず行っちゃえと歌っているわけですが。

「俺ね、そもそも1回通った道をまた通るのが嫌いなんよ。家から駅に出て帰るんでも、同じ道を行き帰りするのがほんと嫌なん。それは飽きるから。だったら、遠回りでもいいから違う道を通りたいわけ」

――分からなくもないですが、私は最短距離の方を優先するかなあ。

「えー。俺なんか酔っ払ったらそれが強化される傾向にあって、なかなか家に帰れないっていう(笑)」

――しらんがな。とにかく、この曲で助かる大人は実は多いと私は思いました。

「うむ。今回そういう歌詞が多いかも、大人が助かる歌詞(笑)」

――それとこの曲、単純に凄くカッコいいですよね。

「カッコいいよね!だけんもし、今作にリード曲があるならこの曲かなあって俺も思うよ。ある種『Macka Rocka』であれば“RED MONKEY”みたいな役目の曲だと思う。まあでも、今回は特にリード曲はないんだけどね(笑)」

――なるほどなるほど。ただ私、杉本さん的に今回一番気合が入っていたのは、次の4曲目“天国ロックショー”なのではないかと思ったんです。

「ほお」

――途中まで気がつかなかったんですが、聴いてるウチにハッとしたのは、これはレピッシュだと。それも初期から中期にかけての、具体的に言えば“ku.ma.mo.to.”から“マジック・ブルー・ケース”にかけての。

「そうかもね。あとね、作ってて自分で途中で思ったのは、現ちゃんのノリノリ系の曲の流れもあるのかもって」

――ああー。それね、レピッシュだレピッシュだと上がりつつ、よくよく歌詞を聴いたら再び「!!」ってなったんです。歌詞にも現ちゃんが登場している。しかもそうそうたるメンバーに混じって(笑)。

「いろんな人がいるんだけど、大好きな人で歌詞として語呂が合った人を選んでね。だってキリがないくらい入れたい人はいるから、それで『アンドゲン&&&&&…』ってしたんだけど、とにかくこの歌詩を作ったきっかけっていうのはね、マグミの50歳の誕生日のライヴをチッタでやったじゃん?レピッシュ。んで、その頃山口富士夫さんが亡くなったばっかりで、リスペクトする先輩ばかりが亡くなるって話から、奥野が『なんかだんだん向こうの音楽の方が楽しそうになってきたなあ』っていったんよ。奥野なりの表現だったんだろうけど、なんか感じてさ。そんで我々だっていずれ死ぬ。特に俺ら、現ちゃん亡くしてそういうことを思うことが増えてるから……清志郎さんまで亡くなるし。で、クサい話になるけどでも、それでも音楽は生きてるって思うし、奥野が言ったようにあっちの音楽も楽しそうになってきたなとも思った、っていうのがガーッと混ざって、出てきた曲がコレだな(笑)」

――そうだったんですね。でも本当、レピッシュの新曲と言われても納得のナンバーになっていると思いました。

「作っている時はそこは全く意識してなかったんだけどね。だってこの曲の作曲の発想は、去年から大樹と一緒にやってて、彼のドラムに対して俺が感じたイメージで作ったから。自由に、感情のまま音楽表現として太鼓を鳴らす感じっていうか」

――この曲、聴いているとハッピーになるんですが、それはその辺りから端を発してそう。

「うん。もちろん本人にとっては違うかもしれんけど俺の中では勝手に大樹のドラム=“天国ロックショー”のようなタイコのイメージがあるんよね。しかもこの曲ベースの難易度凄く高いのにサラッと弾いてしまう有江くんの凄まじさ!」

――でもやはり4曲目のこの曲で、杉本恭一の作るロックのアルバムとして、一旦ビシッと、グっと締まる感じがある。

「なるほど。そうか、普通のバンドにはこういう曲あんまないのかもね」

――そうなんです。杉本恭一の杉本恭一たるゆえんがここにある。最初はね、2、3曲目で70年代初頭~70年代中盤ときて、4曲目のここで70末から80年代のパンク&NWにきたんだなと思ってたんですよ。例えばアダム・ジ・アンツ、ヘアカット100、ア・サーティン・レイシオ等にあった軽やかなビート。それをヘヴィーなサウンドと敢えて合致させて云々と思ってた。

「うん」

――でね、ここまでの4曲って、年代的にキレイに順番になってるじゃないですか。

「50年代60年代70年代80年代と来たわけだ、あはははは、確かにね(笑)。お前スゲーね、確かになってる!」

――なので私はてっきりこの後もその流れが続くのか?と思ったんですよ、こう、本作の幅広さの裏にあるコッソリコンセプトはそれなのか?と。

「まあ、我々の音楽体験の経過でもあるもんな(笑)」

――ええ。で、てっきりこのまま進むのか?と思ったんですが。

「最後は打ち込みになっていって、みたいな?(笑)」

――でもそんなわけはなかった(笑)。5曲目の“Composition”を聴き、その名曲度合いに心から感動すると共に、自分の勘違いを悟ったわけです。あ、年代順関係ねえや、と。

「わははははは!」

――本当にね、この5曲目“Composition”は、心からとても素晴らしい曲だと思います。

「そういえばお前、ライヴの時から言ってたな、この曲がいいって」

――ええ。昨年末に聞いた時点でいい曲だなと思いましたが、こうしてレコーディング・ヴァージョンを聴くと改めて本当にいい。

「何ていうか、俺が曲を作るときに〈寄って来る〉感じっていうのがあって」

――曲が自分に乗り移って来る、みたいな?

「そう、だから……この曲で一番言いたいのは、(歌詞の)最後の一行で、『指先から弾け飛んだ この音と僕は生きてる』ってこと、ちょっとカッコ悪いけどでも、テーマは、音楽があるから俺は生きてるってこと、そういう歌なんだ」

――そして、前作『Macka Rocka』収録の名曲、“MOON”と対になる曲だなあとも思ったのですが。

「言ってみれば、“MOON”もそういう歌かもね。ただ、あの曲は月が主役になってるけどね。この曲は何が主役か分からない。ただ、曲が近づく、芽生える、寄って来る、っていうのがこういう感じなんだっていう歌。何かが生まれてくる時に導かれて行く時の感覚、例えば中込なら原稿を書いててさ」

――ああ、3~4年に1回ぐらいですが「この原稿は我ながらヤバいの書けた!」っていうのがあります。

「うんうん、そういう時ってさ、何かこう、あるでしょ? 特別な感覚っていうか」

――乗ってくるというか冴えてくるというか、妙な波が来る感覚はありますね。

「そう。で、俺の歌って、説明するには言葉にしずらいことが多いわけよ。言葉にしずらい、でも確実に存在する『何か』。エネルギーなのかオーラなのか、中込の言う波や冴えでもいい、とにかくそういった何かを言葉にしようとするとこうなるというか」

――深いっすね。

「まあでも、聴く方は自由に感じてほしいんだけどね(笑)」

――じゃあ遠慮なく言いますが、“MOON”が夜で、“Composition”は昼っすね!

「うん、そうだね(笑)」

――あと、一見淡々としているようで、何か妙に引っ掛かりがあるというかフックがあるんですよこの曲には。それが何なのかまでは、悔しいことに分析できなかったんですが。

「はははは。ロック好きにしか分からない何か、そうゆう歌を俺は作ってるのかも(笑)。例えばさ、もしポップスシーンでこういうメロディーの曲が出てきたとしても、この歌詞には100 パーセントならないじゃん?」

――あ。

「多分、世の中の期待値とか平均値とかが反映された歌詞になるんだろうけれども、そんなものは我々の管轄ではないやん?」

――ですね、そんなものはクソ食らえです。ただここでは、別に、反逆の狼煙を上げている訳でも、アンチテーゼを訴えているわけでもないんですが。

「ないないないない」

――しかし、極めてナチュラルに、創造、オリジナリティー、意外性をぶつけてくるという意味でロックのアプローチがあるという。

「何かが産まれる、寄って来る。俺にとってはそういうことだよね」

――はい。で、名曲に相応しく大変良い話が続く中恐縮なのですが、続く6曲目“土足で上がったその靴をまず脱げ!”で私はまた違った意味でとんでもないショックを受けるわけです。

「この順番大爆笑よね(笑)。ほんとはね、最初は、ここまでの流れを汲むために、7曲目の“海月達の踊り”をここに置いてたんよ。でもそうするとこの“土足~”が地味になっちゃって。結果的にここが一番破壊力があっていいなと」

――確かにそうかも。5~6と並ぶ2曲がよりにもよってこれとこれか!状態だからこその大爆笑効果がここにはあるわけで……いや、基本的には非常に賛同できる良いことを歌っている歌なんですが。

「やろ?」

――はい。と同時に、これはオヤジだ間違いなくオヤジだ!とも思う歌で(笑)。

「はっはっはっはっは!何だとてめえー、その通りだ(笑)。確かに大人になって言ってる言葉やもんね、オヤジだ(笑)」

――大変スパッと気持ちいい雷親父がおりますね。

「仕事の時の場合が多いけど初対面の人とかよく知らない人とかに年下でもきちんと敬語を使って喋ったりする事あるやん?あれは、俺は敬語を使ってんだからお前もちゃんと使えよ!という脅しでもあると」

――はははは。その感覚凄くわかります。

「分かるやろ?で、そういった感覚のモロモロがここには全部入ってんだよな(笑)。とにかく俺は、土足で上がった靴をまず脱ぐところからでないと、人とは付き合えない!」

――このタイトルに言いたいことの全てが凝縮されてますよね、てめえ人ん家上がる時は靴をまず脱ぎやがれというそこに、全部ある。

「そうね、ある意味歌詞読む必要ないね(笑)。まあこの曲はあれだね、俺のアルバムの中で必ずある、面白ポジションを勝ち得た曲じゃないですかねえ」

――勝ち得た(笑)。あとね、この曲のバッキングで入る男性コーラスがまた面白さに拍車をかけてるんですよ。

「あっそう(笑)。俺達がパンクから得た感覚があるやん?10代20代の頃は世の中のことあんまよく分かってなくてとにかく反抗反発してた可愛い感じやったけど、この曲はね、50代のパンク!」

――はははははは!違いない!!しかし、杉本恭一をよく知ってる人ならば、「またヤラレた!」で済みますが、知らない人が聴いたらこの5曲目と6曲目が同一人物の作品とはとても思えないでしょうねえ。

「何でよ、間違いなく同じ人やろ?」

――いえ、分裂病患者にも勝るギャップです。

「世の中、どんな人間にもこれくらいのギャップはあるよ(笑)」

――そうかなあ。まあ話を続けまして、7曲目“海月達の踊り”。この曲はNWミーツビートルズにローファイ感をプラスしたというか、どこかブッ壊れた感じがする楽曲で。

「この曲はね、自分の中では今作で一番絵画的というか、感覚で出来た曲で……意外と好きなんよ(笑)。(歌詞は)何言ってんのかサッパリわかんないかもしれないけど、でも、これを聴いた人は凄く映像が浮かんでくると思う」

――ああー、それはあります!

「あるやろ?ここにある音と言葉が押しつけずに、聴いた人の頭の中の映像に繋げると思うんよ。透き通るクラゲの先とかも含めて、ものすごくカラフル、サイケに」

――元画学生&グラフィック・デザイナー杉本恭一の、音楽による空間デザインである。

「デザイナーっつうほどグラフィックやってきてないけど(笑)、でも、うん。そんで、自分でこの歌の絵とかアニメーションとかを作りたいなと凄く思ったりしたんだよね。そういう、絵を描きたい!みたいのが自分で作っておきながら凄く触発される曲だね」

――総合芸術に繋がるナンバーである。しかも杉本さん、やろうと思えばその全部自分で出来るわけですものね。

「よく空想するときにさ、現実の景色と言うよりはどっちかというと、例えばマンガで言うバックに土星が飛んでるみたいな表現あるじゃん?いきなり背後に宇宙がバーンってあるような。ああいう感じが俺にはあるんよ。俺に限らず、ある人はいっぱいおると思うけどね。とにかくそういう感じがこの曲です。でね、俺の曲を聴いてくれる人でこういう想像力を使う曲が好きって言ってくれる人が結構多いような気がしてるんだけどね。とりあえず宮崎洋一さんからはメールが来ました。『クラゲよかね』って言って(笑)」

――はははは。そして面白いのが最後8曲目“色の無い夢”、いわば絵画的表現の2曲が繋がり、エンディングへと向かうわけです。しかも、杉本さんは割合とカラフルな、ビビットな色使いをされるイメージがあるのに対して、色の無い、という表現がここにはある。それも大変興味深かった。

「それ、結構言われたな。タイトルがまず先に発表されたじゃない?その時に」

――それだけ皆がまず思うことなんでしょうね。だって、赤や黄色といったはっきりした色を打ち出してきたことが多かったわけですから。

「夢って、実際自分が見てる夢に、色があるのか無いのかって、あんまよく分かってないんだけど。でもこの曲は色の無い夢の中に居て、その中で何とかしたいと思ってて……深いところでね、深いところまでいても、それを見つけて捕まえようとしてる、背中を押してくれる、抱きしめようとしてる人間は絶対いるんだっていうか。まあ上手く言えねえな、この曲で言えるのはそんな感じかな」

――杉本さんなりの優しさや温かみに満ちている曲だとも思いました。

「あ、そう。とにかくさ、俺達はなんだかんだ幸せな時代に生きてきた気がするのよ、子供の頃とかもさ。でも今の人たちは、俺達には理解できない深い闇に入っちゃうことがあって……勿体ねえなって思うんだよ。夢を持ちにくい時代に、確かになっちゃったんだと思うよ。何でもある様に感じて、何でもお金あれば手に入る様にも感じて、調べりゃ嘘でも何でも結論の様な物まであって……だからこそそこに無いものを想像することができなくなってるとしたらそんなつまらない話はねえだろ!と。俺は思うわけよ」

――杉本さんがこの曲で言わんとしてることは、そこだったんですね。

「どうなんやろ。俺はね、曲を説明するのは苦手だし、皆まで言いたくない部分もあるんだけど、それは別に秘密にしたいとかじゃなくて、俺が全部言ってしまうことで聴く人の想像力を邪魔したくないっていうとこが大きいんよ。実際さ、俺の曲を聴いたお客さんや、今日中込が言ってくれたみたいな言葉で、俺自身『そうか、そういう感じ方もあるんだ!』って思って、そこでさらに違うものが見えて、曲が変わって行くというか膨らんだり広くなったりすることもかなりあるんだよ」

――受け手の感覚がまた発信者をも変化させる。我々にとっては嬉しい言葉です。

「ていうか、そうじゃないとつまんないと思うんだよ。だから今回の『7↓8↑』も、タイトルの意味やどう読むかも受け手の自由に本当はしたっかたんよ、色んな不便が生じるのでもちろん無理だったけど」

――はははは。

「『ナナシタハチウエ』でもいいし、『ナナシタヤジルシハチウエヤジルシ』でも『セブンエイト』でも何でも良いんやけどね。お前はすぐ『ナナハチ』って言ったよな?」

――私はてっきりロックを69に掛けて、ロックの上も下も行っちゃうぜ的な意味で78だと思ったのでナナハチと言ったんですが。

「お前それね、いただくよ、素晴らしすぎる(笑)。賄賂を渡すから、この69の下りを使わせてくれ(笑)明日からまるで自分が考えてたかの様にそれも使うよ(笑)」

――それしかないと私は思ってたのに、どうやらそうじゃなかったという(笑)。

「まあ単純に7と8という数字が大好きなんよ。7はラッキーセブンだし、8は末広がりやろ?ただまあ並べた時に、ただ数字を並べただけじゃ景色がつまらんやん?そんで七転八倒よりは七転び八起きだと思って矢印付けてこうしたんだけど……まあ全部後づけやね。最初のきっかけは下らん理由よ、7枚目8曲入り。何で誰も気付かないんだろ?」

――マジかーーー!!!!

「はっはっはっはっは!」

――ひでえーーーーーー!!まさかそんな!!!!

「ふふふふふ.....あと、俺は是非このタイトルを元関脇・高見山に読んで欲しい!」

――ナナハッチ!って、古すぎて誰がわかるんですか!!

「そうだね、ツアーのMCで使おうと思ってたけど、絶対通じねえよな(笑)」@

インタビュー:中込智子





杉本恭一 Official Web Site


8th full album【STEREO 8】
2016.11.16 OUT !!