magnetism


4th Album

1. カナリヤ
2. ダミーリリック
3. Arch’s Light
4. ピカピカ
(お詫びと訂正/CD裏ジャケット及び歌詞カードでタイトルが誤植でピカピカになってますが正式にはビカビカです)
5. Brand New Life
6. ランプ
7. 日曜日 [ボーナストラック]

2006.12.6 Respect Music Japan UGCA-1015 ¥2,100(tax in)

magnetism - 杉本恭一

●さっそくですが『magnetism』、すっさまじく素晴らしいです杉本さん!

「おおー、そうかそうか」

●ええ、このジャケットには本当にもう心底シビレましたとも!!

「うんうん……ってまずジャケットかい!」

●だってマジンガーZじゃないですか、このロボットの下半身。

「はははは。まあ、俺も実はかなり気に入ってるんだよ。このジャケット・デザインに関しては前作から組んでる同郷九州出身のデザイナーSKULLPOPに頼んでて、物販Tとかもやってもらってるんだ」

●物凄く優秀ですね。この方。

「うんうん優秀優秀。でさ、このジャケットにもちゃんと意味があるんだよ。要はさ『magnetism』ってマグネット、磁石じゃん。で、引き寄せるっていう意味なんだけど、デザイナーの彼がそこにさ『杉本は引き寄せるだけじゃなくて何か出してる』と(笑)。『吸い取って出して、また吸い寄せてる』って言うんだよ。で、それを表現した結果がこれなんだけど、つまりは貰い合いだよね」

●貰い合い。大変美しい表現ですが。

「そう、美しい。ばってんがその美しいことが俺の世界観ではこうなるという、そんなジャケットやね(笑)」

●はい(笑)。で、引き寄せながらも何か光線を出してる下半身マジンガーZの磁石ロボットが作品の顔となっている本作。もちろん、その内容も破壊的に素晴らしいわけですよ。

「うむ」

●いくつかポイントがあったのですが、まず第一に、全体的に非っ常にアッパーであること。猛烈にエネルギッシュで軽快で跳躍感&疾走感があって、勢い炸裂なわけです。

「うんうん、よかったよかった」

●さらに第2のポイント。いい意味でというかむしろ嬉しい意味で、レピッシュを彷佛させる内容だと思ったんですよ。

「お、気付いた? それさ、今んところ聞かせた人には意外に言われてないんだけど、確かに今回は初期レピッシュの時のような発想での作曲の仕方を今の俺がやったらどうなるんだろう? という実験もかなりあったよ。」

●マジすか!?? うーおー!!

「ってお前、自分で気付いたんやろが(笑)」

●気付きましたけど、でも本人を前にして言うのには結構ドキドキしたんですよう。ちょっと禁句なのかなとか思うじゃないですか。

「ははははそんな事はにゃーよ。まああと、『Marking Point』からの繋がりというのももちろんあって。『PENNY ARCADE』がああいうアルバムだったから『Marking Point』がああいう形になって、『magnetism』で完結っていうか1つ終るような感覚、ちょっと『Marking Point』と『magnetism』は連作チックなところがあってさ。で、『Marking Point』の根っこにあるのがビートルズだとしたら、今回の根っこはニューウェーヴなんだよ」

●ええ、ええ。まさにそう。それがレピッシュ感覚にも繋がっているんですよね。で、ニューウェーヴの中でも特に、スペシャルズやXTCの……。

「お前、凄い! XTCなんだよマジで。ニューウェーヴの中でも物凄くXTC(笑)。分るよね?」

●はいー(笑)。でもこれ、別に曲調が似てるというわけではないんですよね。むしろメロディーの作り方というか変化のさせ方や、ポップなんだけどどこか歪んでいる、そのいびつとポップの同居の在り方にXTCの影響がかいま見えるな、という。ただ、そもそもどうしてXTCなんすか?

「今さ、ニューウェーヴに影響を受けた若いバンドが海外で結構出てきてるやろ? でもさ、俺からすると彼らの音楽って、全部XTCなんだよ。まんまXTC」

●ですね、洋邦含めて多いですね、最近。それも「これ、原曲分りますがな」というパクりに近いレベルのものも(笑)。

「そっくりなの多いよね(笑)。で、だったら俺が俺なりの、XTCからの影響っつーのはこういうもんだと見せてやりたいとこが(笑)。まあ、あとさ、今回こういう、ちょっとアッパー目のアルバムにしようというのは最初からあったんだけど、じゃあどういうアッパーにするかと考えた時に、『初期のレピッシュみたいな発想を今やったらどうなるか。それも、エレキギターだけで表現するとしたら!』っていうことを閃いて」

●それらが全部ギュッと盛り込まれたのが本作である。なるほど。しかし、初期レピッシュの発想というアイデアを自ら生かす心情になれたのには、何かきっかけがあったんでしょうか?

「まあ、あえてやるっちゅーんではないんだけど……ずっと、スカっぽいのとかレゲエっぽいのとかやって無かったやん。でも、前作辺りで『もういいかな?』と思い始めたんだよ。っていうのもさ、外から依頼されて仕事したりする時、未だに『“パヤパヤ”みたいな曲を作って下さいよ』とか言われててさ。昔はそれが嫌だったんだけど、最近はだんだんそれを光栄に思うようになれてきたんだよね、自分の作った物が認められているわけだから。で、『Marking Point』で1曲スカの曲やったやん(“ピース”)。そこでまあ、変なこだわりが抜けたんだよ。『やっぱ俺、こういうのも好きだわ』と(笑)」

●はははは。でも良かったです、その境地になっていただけて。

「やっぱ何か、俺が好き好んで聴いてるものもそうだったんだと改めて再確認したというかね。最近の音楽を聴いていても、それを逆に意識したり。まあそれがXTCに掘り下がって行くんだけどね」

●そしてそのスカやXTCを含めたニューウェーヴ感なんですが、ここにあるのはニューウェーヴのど真ん中ではなく、あくまでニューウェーヴのフレーバーなんですよね。


「そうそうそうそう。だけんやっぱね、コンセプト的にはニューウエーヴはあったけど、やってく内に自然と杉本恭一節になるというかなってしまう(笑)。だから意識してたわりには、やっぱ杉本恭一で仕上がったなあというのは、やり終った時に実感したね。あとさ、サウンド的には俺は割といろんな音色入れるの好きじゃん。シンセもキーボードもブラスも生楽器も、いろんな音が好きなんだけど、今回はそういうのは全部やめて、とにかくエレキギターでアレンジを表現しようとしたんだ」

●ギタリスト杉本恭一としての世界を、アッパーとニューウェーヴ感覚で追求した。

「そうそう。っていうのもさ、去年ぐらいから俺、ギタリストやってるじゃん」

●何を今さら言ってるんですか!

「違う違う、だけんほら、およばれしてギター弾く機会が多くなってきたやん。ライヴでもレコーディングでも」

●あ、そういう意味か。


「で、そうやって弾いてると、『あ、俺ギタリストじゃん!』って思い出してさ(笑)。そんでいろいろ弾いてみっと意外に凄い喜ばれるから『そうか、やっぱ俺のギターは面白いんだ』と『じゃあ、自分のでもやらなきゃ』と(笑)。たださ、今回、最初に予定してたところで制作に入れんかったのよ、そんな感じで他の仕事が入ってて。で、『年内に作品出すのは無理かなあ』と思ってたんだけど、『でも何とか3曲入りのマキシでもいいから出しちゃあねえ』と思ってて、そんでいざ制作入ったら5曲ぐらいスポポポーンと出来てさ、そんで御存知の通り、レコーディング終ったら7曲に増えていたという(笑)。あと二週間余裕あったら10曲入りになってたな(笑)」

●メチャメチャ勢い付いてたんすね。でまた、そういう高揚感も作品にでまくってるから、さらにアッパー感が上昇してるんだよなあ。

●はい。ではここからはそんな本作の個々の楽曲について、解説をお願いいたします。

まず1曲目“カナリヤ”。これ「これが1曲目かい!?」と思わずひっくり返ったんですが。

「うん、1曲目っぽくないよね(笑)」

●しかもこの意味不明の歌詞がまた……。

「ええーっ、何言ってんの、知らんのか? 歌を忘れたカナリアの歌詞、結構そのまんま色々言葉使ってんだぞ!」

●えっ、そうなんすか? 童謡のカナリヤはぶっちゃけ、出だし部分しかしらなかったんですが、柳の鞭とかいうフレーズあるんだ?

「あるある。柳の鞭でぶちましょか、とか、小薮に埋めようかとか。だけんカナリアの原曲の歌詞って取り方によっては凄いヒドイというかかなりダークなんだよ。でまあ、俺、そういうの好きやん(笑)」

●ですね(笑)。その、実はとんでもない内容を持つ童謡をモチーフに、さらにとんでもなくしたのが“カナリヤ”の歌詞だった。

「うん。そんで、これこそ昔からある俺の発想だよね。童謡から出るっていう」

●ああ、ですねえ。歌詞もそうだったんだ。しかも童謡をモチーフにしたといっても楽曲自体は非常にアッパー。つまり冒頭からもう、怖いんだかキュートなんだかよく分らないという世界になっており。

「はははは。その通りだね」

●で、何でこの曲を1曲目にしたんすか?

「最初は2曲目の“ダミーリリック”を1曲目にしようと思ってたんだけど、“ダミーリリック”の歌詞が余りに馬鹿馬鹿しかったから……」

●あははははははは! いやすみません。でも個人的にその“ダミーリリック”、今作の最ツボ楽曲だったんですよ。なのでこの後にしつこく聞きますんで、“カナリヤ”に戻りますが。

「(笑)。でさ、“カナリヤ”のイントロ部分って『はあ?』って思うようなイントロじゃん。冒頭1曲目って大体、緊張感を与えるか勢いで括るか、っというところに『はあ?』がくる(笑)。逆にそれが面白いかなあと思ってこれにしました」

●はははは。では次、その“ダミーリリック”なんですが、これ本当に素晴らしいです!

「はっはっはっは」

●何と言うかもう、突っ込みどころ満載なんですよ。というのもまず単純に曲がいいんです、半端じゃなくいい曲。そしてそこにのっかる歌詞! これがもう楽曲の良さを粉砕するまでに台無しなわけですが、それがまたいいんですよ!!

「嬉しいねえ、まさにその台無しな部分を含めて好きになって貰いたかった曲なんだよ(笑)。ていうか実はさ、この曲、最初に出来た時は、すっごいマトモな歌詞だったんよ。でも、それが我ながらなんかつまんなくてさ。普通にいい曲っつう感じになっちゃって。そんで今度は英語チックに作ってみたんだけど、そしたら今度は『何カッコつけてんだバカ!』と自分で自分に突っ込みを入れてしまうような仕上がりに」

●はははははは。

「そんで次は、もうちょっとレベルの低い方向に行って、“ダミー&リリック”っつうのを作ったんよ。まあ、そん時の歌詞もここにちょっと残ってるんだけど、でもさ、そしたらそれがレベル低すぎて……それこそ『いかりやがどうした』とかさ。しかもそれが面白くないんよ。つまり本当の意味で台無しになって(笑)。でもさ、実はそ3回目の“ダミー&リリック”で、レコーディングし終えて、コーラスまで入れてたんだ。そしたらレコーディング終った夜に、夢に見てさあ。たぶん、思ったほど面白く仕上がらなかったっていう後悔があったんだろうね。そんで、夢の中でも葛藤して『もうボツだあ!』とか叫ぶ結果に(笑)。でも、その夢の中に、ここの歌詞にある『湯河原』が出てきて」

●あはははははははははははははは! いやすみませんすみません、曲知らない人には何のこっちゃですが、歌詞を読んだ後ではもう笑いが、笑いがとまんねええ!!!!!!!!!

「湯河原」

●やめてえええええええ、ひいーっ!!!!

「面白いなお前」

●で、でも、普通この発想は出てきませんよ。

「逆空耳アワーだけんね。しかも空耳アワーで聞こえる日本語の、意味が微妙によく通じないあの感じまで再現しているという」

●うん、うん! 英語かと思って聴いてたのに、歌詞カード読んでガーンと来ましたもん。完全に逆空耳!

「そう。一聴した限りでは普通にカッコつけた英語に聞こえるしね。そんで、この“ダミーリリック”ヴァージョンでもう1回レコーディングし直したんだけど、そのレコーディングしてる様は自分でも、ビデオで録画しとけばよかったと後で思ったよ。
っていうのもこのニセ英語にはエンジニアの大英と一緒に物凄くこだわって作ってさ、『それだと発音が悪い!』って場合は、また歌詞いじったりして(笑)」

●くだらないことに全力を傾けることこそ美しいのですよ! しかも何気に大発明!

「はははは。そうね、多分俺が史上初の発明なんだろうけど、一生誰もついてこないだろうというか、普通誰もやらんよな(笑)。でさ、実はもうライヴでも披露してるから、知ってるお客さんはいるし『ああ、今度は英語なのね』と思ってるお客さんもいると思うんだ。だって歌詞読まないと絶対気付かないように作ってあるからさ。でも、読んでみたら実は日本語だという(笑)。ま、その内容に関してはみなまで言わないが、ただ俺も最近、広告とかで『湯河原』って書いてあるのを見るだけで笑うよ(笑)。しかもジャケットのロボットがマジンガーZで恭一だから、名前がZKなんだよ。そんでZK(絶景)というフレーズが」

●くだらねえええええええええ!

「くだらねえよ。でも、こんくらいくだらねえことをやると、何か自分で爽快感があるね(笑)」

●はい(笑)。でこの“ダミーリリック”の楽曲部分なんですが、何度も言うように単純にいい曲なわけですよ。しかもこれぞXTCであり、ニューウェーヴであり、そしてパンク。そのパンクも、西海岸メロディックのノリもある。英語風の歌詞がまたそう聴かせるのかもしれませんが。

「そうやろ? やけんこの曲に関しては日本語が合いずらいというか合わなかったんだけど、だからと言って日本人がよくやっている日本語を英語チックなクセをつけて歌う唱方で歌うのにはどうしても抵抗があったんよ。だってあんなん一番カッコ悪いやん。だけんこの歌詞にはそういうのに対するアンチの意味合いもあったんだ」

●そんな大層なもんかという気もしなくもありませんが。

「まあそうだが、でもあったんだよ!(笑)」

●はい。では3曲目“Arch's Light”。一転してミドルテンポのスカ交じりナンバーですが、この曲で面白かったのは、ミドルなのにも関わらず、やはりアッパーであった点。そして、“ダミーリリック“とは全くタイプが違う中で、やはりこれもメロディーが素晴らしくいいんです。

「気持ちいいよね。ハーモニーとか、裏切って行く旋律な感じが、まあ俺が好きな感じだよね。サイケな方向の杉本メロディー」

●ええ。直球のようでいて変化球な、無気味ポップ。

「まあこれは俺の中では、想像力を刺激するような、まあ、色のある世界だね。色が見えてくる世界。もともと俺、歌詞の中に色がすごくよく出てくるけど、それは自分の音楽から色が聴こえてくるから、見えるから、表現でどうしても使いたくなってくるんよ」
●ですね。ただ、ここにある色彩は、カラフルな色というよりは、くすんだ感じの色のヴァリエーションといった趣がある。

「うん、くすんでる所で、奥にあって、開けてる感じ。コラージュとかでさ、モノクロの中に色がぽつぽつある感じの作品とかあるじゃん。そんな感覚かなあ。で、これはほんと、どのアルバム作っても(このタイプの楽曲は)入ってくるような感覚はあるんだけど、この流れでここにあるのがちょうどよく収まったね。っていうのも、1~2曲のこの流れでこのまま行くと息切れしそうだったから(笑)、1回クールダウンして活性化する感じになったと思う」

●はい。そして4曲目“ビカビカ”。これは前作からの流れを感じさせる、ビートルズのニュアンスが感じられるナンバーで。

「あ、そう? これはさ、中込が呼んでくれたオムニバスの『ロック・ザ・ウルトラマン』もそうだったんだけど、こういうアレンジはここん所必ず出ちゃうナンバーで。だけん、“ビカビカ”、“ウルトラマンレオ”、そして『Marking Point』の時の“巨大エネルギー”、これ3つを似非ジャズ3部作と俺の中で言ってるんだよ(笑)」

●なるほどー。あ、丁度いい機会なんで言いますけど、“ウルトラマンレオ”ライヴでやってくださいよー。

「お客さんからもやってくれって手紙貰ったりするんだけど、でもあの曲、えらい難しいんだよ(苦笑)。でも、もしかしたらどっかでやるかもしれないね」

●やる時は絶対教えて下さいね! で、話を戻して“ビカビカ”。比較的へヴィーなナンバーなわけですが、杉本さんの唱方があえて爽やかなんですよ。それが面白い。

「それは多分ね、“ウルトラマンレオ”が大きいね(笑)。いやマジで、あれをやったことにより、ガーッと行くだけじゃなくて、引いて歌うのもカッコいいんじゃないかっていう発想になったからね。それが身体に合って自然に出てきたんじゃないかと思うよ。でも、すんげー難しい歌だったよ、これも。こういう跳ねたもの、シャッフル調の曲は、俺はそこでどうしても16の、細かいリズムの取り方を歌詞でするから、本来ラップ調の歌い方が楽なのかもしれないんだけど、俺はやっぱどーしてもラップっぽくはしたくないから、そんでなおさら難しくなっちゃうんだよなあ。しかも演奏的にも難しいんだよこれ」

●25年選手が何を言いますか。

「いや、どんどん難しくなっちゃうというかしちゃうんだよ。でも、難しく聴こえないようには絶対するんやけどね」

●あ、それが一番難しいと同時に潔いっすよね。一見ポップでキャッチーなのに実際演奏してみたら超絶難しい曲って凄い尊敬しますもん。逆に、難しく聴こえる難しい曲はいやらしくてレベル低いと思ってしまいますしね。あ、それと、歌い方と言えば先ほどの“ダミーリリック”でも面白かったことがあったの忘れてた。あのね、低音域が凄くカッコよかったんですよ。ていうか、普段の杉本さんの音域より、低い声で歌ってる部分が凄く映えるなあと思ったんですよ。

「そうね。だけん、美味しいところって、凄い高いところか、逆に低いところか。まあ、でもみんな、自分の一番歌いやすいところで音域を設定することが多いじゃん。けどまあ、俺はいろんな音域を使いたいとは思ってて。曲が変化しても歌が変化しないと面白くないからね」

●いい話です。では戻しまして5曲目“Brand new life”。これはもう痛快に速くてですね。分かりやすくニューウェーヴがありつつも、そこにオルタナを合致させた感覚が非常に気持ちいい。

「うん、これはもうストレートやね。そんで、今現在ニューウェーヴと言われているものに近いかもしれない」

●かもしれないが、そこはもうニューウェーヴで青春を過ごした者の意地と言うか。

「意地っつーより、身体に染み込んでるものだからね。まあ、そういう俺がやるとこうなるっていう感じかな。で、この曲はまだライヴでやったことはないんだけど、案外ライヴで映えそうな気がしてる」

●ですね。ただそんな中、この曲、歌詞が凄く不思議と言うか、ぶっちゃけ、よくわかんないんですが(笑)。

「うん。わかんないよね(笑)。だけん、ここで言いたかったことは……ここに出てくる言葉自体はさ、単語として、どれもこれも非常に前向きじゃん。言葉だけは。ってこと。まあそんで、わけ分らんところにみんな行こうよという、そんな歌です」

●説明聞いても、分かったような分らないようなという気分なんすが、まあそれは各自聴いた人の解釈で。ということで、次が本作の段落としてのラスト、6曲目“ランプ”。

「言わば『magnetism』の一回目のラストやね。7曲目はボーナストラックにしたけん」

●はい。で、ごめんなさい、スローバラードなんで、正直に言うと私的には反応薄いんですが、ただ、この歌い方にはシビレました。

「ははははははは!ぬしゃ歴史的にレピッシュの曲も含めてバラード的な曲て一曲も反応しとらんよね(怒)!唯一Girlfriendくらいよね(笑)。 ばってんこれもすんげー難しかったんだよ歌。だけん、俺も大分上手になったのかな? っていう感じやね(笑)」

●ということで、総合すると、ギタリスト杉本恭一を前面に打ち出した本作は、同時に、ヴォーカリスト杉本恭一の新境地をも花開く結果になった作品という……。

「ちょっと待て、なんぼなんでも“ランプ”の質問それだけってのはないだろ。俺、こういう曲をアルバムに入れる意味、結構大きいと思ってるんだぞ」

●あ、すんません、ついー。えーと、じゃあ、その意味の部分をお願いします。

「(苦笑)。『PENNY ARCADE』の時のようなにおいのもので、どっかでこう、繋げたいっていうのがあったんだよ。それは、アコギ1本でもできるような」

●ああ、一人旅でも演奏できるナンバー。

「うん、前作なら“花火”っていう曲がそうなんだけど、今回はそれをエレキでやりたかった。まあエレキバラードやね。けどさあ、いい曲だと思うんだけど、お前、毎回の事ながら見事にこういう曲は反応ないねえ」

●すみませんすみません、いや、いい曲っすよ?

「はっはっは。まあヨカヨカ、好きに聞いてもらってよかとばってんがね。」

●あ、いい歌だと思いますよ。でもあの、私、遅い曲ダメなんで。

「おーまーえーっっっ!(怒)。まあいいや、誰か好きだって言ってくれる人がきっとどこかにいるはず! それにさ、俺はこの先何10年だって音楽やるつもりでいるからさ、ひょっとしたらバラードだけの作品だって作るかもしれないし、キミは嫌かもしれないけれども(笑)。とにかく、作品の幅や歌の幅を狭めるようなことはしたくないし、むしろどんどん広げて行きたいわけだし。まあ、80才越えても“ダミーリリック”みたいな歌も歌っていきたいけどね(笑)」

●ですね。またそうある為にも、バラード等も必要な、意義のある楽曲であるという。それに実際、歌の幅ということに関しても、この、ちょいかすれ気味の歌い方とか相当色っぽくて素敵だと思いましたしね。杉本さんはベテランだけれども、でも、常に自分の進化や可能性を追い求めている。絶対に止まらない暴走機関車である。そういった部分も色濃く出た作品に、本作はなっているわけですね。

「そうやね(笑)。ギターで音楽表現するっていうことと、歌を歌う人っていうところもどんどんやって行きたかったという、そんな作品ですね」

●はい。で、ボーナストラック“日曜日”なんですが、ボーナスと銘打つだけあって、この曲だけタイプが全く違います。この曲を入れたのは?

「これは『PENNY ARCADE』に入ってた曲なんだけど、元祖弾き語り用で最初に作った曲なんだよね。下北沢440のイベントに弾き語りで呼ばれてさ、それまでやったことなかったから、『弾き語りかよ?』っと思いながら、でも、アコギ1本でもロックっぽい曲を、と思って作ったのがこれ。で、今回はいつもライブでやってるバンド編でやってみたという」

●でこれ、不思議なんですけど、何故か今回のバンド編の方が原曲の哀愁感が増してるように思えたんですよ。

「そういう所もあるよね、不思議とね。でもまた、これをやったことによって、弾き語りでもまた違う感じが出せるようになってきたんだよ、はっはっはっは。そんで、このヴァージョンに関しては、実はアレンジは特に何も工夫してないんだけど(笑)、それが意外にカッコいいよね」

●うん、ズガゴーンっとくる感じ(笑)。

「演奏も、今作の中で実は一番簡単な曲なんだけど(笑)、でも、だからこそ聴こえるところもあって。ライブでやり慣れてる事もあって凄いいいプレイなんだよ。そんで俺の歌い方もこの曲だけライヴでやってるそのまんまなんだよね。こういうことって実はあんまりやったことなかったんだけど、やり方によっては面白い。オマケのボーナストラックとしては、かなりいいんじゃないかと思うよ」

●ええ、ええ。ということでですね、私今作、非っ常に好きです。最初に言いましたが、素晴らしく素晴らしい作品だと思います。

「ありがとう。まあ、知れば知るほど何かが見えるような、遊び心も満載の、そういう楽しい作品に仕上がったと思うけん是非みなさん聞いて下さい。」

インタビュー:中込智子





杉本恭一 Official Web Site